購入したキッカケは、富士フイルムのフィルムシミュレーション「クラシックネガ」が優秀すぎたため。
写ルンですのフィルムを再現したというマゼンダ気味の発色。どこか懐かしい色味。思わずエモーショナルな写真を撮りたくなります。
よりフィルム風の写りを加速すべく、収差の強いレンズが欲しい。そこで出会ったのが、七工匠 25mm F1.8 25FXBでした。
オールドレンズの選択肢もあったのですが、新品で 9,900円と 目を疑うレベルで安い。
暇つぶしで購入してみるかというノリだったのですが、こんなにもハマるとは想像もしていませんでした。全世界の FUJIFILM X-T4ユーザーに推奨したい、パフォーマンスの高い中華レンズです。
もくじ
軽視していたクラシックネガ
X-Pro3から搭載されたフィルムシミュレーション「クラシックネガ」。
発表された当時は、完全に軽視していました。
新機種のたびに新しいフィルムシミュレーションが追加されているような印象で、マーケティング都合のような雰囲気。フィルムカメラのブームに「まんまと乗りました」と、市場にこびてる感じが気に入らない。
そもそも、そんな短期間に開発された色味なんて、他のフィルムシミュレーションから比べたら作りやコダワリが弱いのではないかと。
しかし、X-T4を購入し、撮影した瞬間にハマりました。全力で前言撤回。「富士フイルムも媚び始めたか」とか、うかつに呟かなくて正解でした。
しっとりとした朱よりの赤、彩度の抑えられた深い緑。
シャッターを切っただけで、溢れる昭和感。それはそれはズルいシミュレーションでした。
七工匠 25FXBの特徴
よりレトロでエモい写真が撮りたい!!(←安易)
画角や明るさなどを加味して検討した結果、七工匠 25FXBに行き着きました。
なんせ価格が安すぎる。
以下のような特徴を持っておきながら、定価 9,900円という破格ぶりです。
- チープさを感じない
アルミニウム合金の採用でサラりとした上品な質感 - 大口径でコンパクト
片手に収まる大きさながら F1.8の大口径 - 高い近接撮影能力
最短撮影距離 18cmでテーブルフォトも楽勝 - 素晴らしいコストパフォーマンス
定価 9,900円という激安価格 - 画質が悪くない
ほどよい収差でクラシックネガとの相性バツグン
なにより安っぽさを感じない質感が良い。
絞りがカタつくことも無いですし、フォーカスリングも適度な重みでスムーズ。プラスチック(ポリカーボネート)を利用した XC35mmF2よりも質感が良いくらいです。
クラシックライクな富士フイルムのカメラにピッタリ。X-T4とのバランスも申し分なし。これで 1万円とは、本当に安い。激安中華レンズの印象をガラリと変えるレンズです。
型番 | 25FXB(フジフイルム Xマウント用) |
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フォーカス方式 | MF(マニュアルフォーカス) |
対応撮像サイズ | APS-C |
レンズ構成 | 5群7枚 |
焦点距離 | 25mm(38mm相当) |
絞り | F1.8-F16(無段階式) |
絞り羽根 | 12枚(円形絞り) |
最短撮影距離 | 0.18m |
外形寸法 | ø60 × 37mm |
質量 | 約150g |
フィルター径 | 46mm |
電子接点 | 無し |
あえて欠点を言うとすれば、キャップが緩いくらいでしょうか。
マウントが少しだけ小さく作られており、既存の純正のリアキャップだと緩く、スグに外れてしまいます。
この安さでマウントとピッタリのサイズを安定して作ることは難しいのでしょう。個体差によってマウントにハマらないという事故を避けるため、多少の遊びがあるのだと思います。
エモーショナルを実現する画角
25mm(換算 38mm相当)という画角が、よりクラシックネガとの相性を高めます。
「画角の違い」は、広く撮影したいから、ズームしたいからという理由だけではなく、被写体との「撮影距離の違い」とも言えます。
望遠よりも広角寄りの方が躍動感が生まれ、感情に訴えかけやすい写真になります。被写体と離れていては、情緒的な雰囲気も出にくいワケです。
背景のパースも含め 被写体に近い(ように感じられる)38mmは、感情的でエモーショナルな表現をするのに絶妙の画角。
カメラ界隈で言われている標準画角 50mmよりも広角よりながら、24mmほど広角ではない。ここに安定と躍動の間が生まれ、ますますエモさが増すわけです。
おまけに、0.18mという 高い近接撮影能力も相まって、寄っては引いて、より様々な演出が行えます。
望遠レンズとの比較例
例えば、XF90mmF2 R LM WRにて撮影した作例との比較。
35mm換算 137mm相当の XF90mmF2 R LM WRでは、圧縮効果により消失点が感じられなくなり、被写体との距離を感じます。
対して、35mm換算 38mm相当の 七工匠 25FXB。
XF90mmF2の作例よりも被写体が小さく写り、表情も落ち着いているにも関わらず、より感情の動きが感じられます。
この画角の違いが、よりエモーショナルな写真に近づくワケです。
作例
実際に X-T4 クラシックネガ & 七工匠 25mm F1.8 25FXB にて撮影した作例をご覧ください。
基本は JPEG撮って出し & 絞り解放で撮影していますが、EXIF情報がないので F値は誤っている場合があります。
今回の組み合わせで、狙いたい絵作りはこの方向性。
この方向性がハマっている場合は、今すぐの購入をオススメします!
木と公衆電話。
ハイライトに緑が乗り、シャドウにマゼンダが乗るという独特の色味が、クラシックネガの世界観を作っています。
購入した翌日に、窓際を撮影した 1枚。
強い光が優しく回り込み、どこか懐かしさを感じる写真に仕上がり。F1.8の大口径によるボケのおかげで、より柔らかい印象を与えています。
逆光で葉っぱを撮影。
太陽の光が直接レンズに入り込んでしまい、強力なフレアが発生。同系色の木々や草に囲まれており、かなり不利な状況です。
ところが、背景もザワつかず、見事に前後の木々を描き分けており、しっかりと被写体(真ん中の葉っぱ)を浮きだたせています。
周辺にはコマ収差が発生しボケが三角形になっていますが、これだけの描画を実現してくれるのであれば許容範囲でしょう。
庭に転がっている浮き輪さえも、このレンズで撮影すれば、あっという間に昭和感。
子供たちが遊んだ後、縁側でスイカを食べている情景が見えてくるようです。
イルカの乗り物。
レトロな被写体を狙えば、ますます昭和感が溢れる写真に仕上がります。
色収差もなく、思いのほか抜けが良い。
オールドレンズの風合いは欲しいのですが、色収差は厄介なのでこのバランスは実に優秀。
少しオーバー気味に撮影した方が、よりクラシックネガの風合いが出ますね。
岩崎の場合は、そこからカラーを -2 にして彩度を控えめに。全体的にふわっとしてしまうので、シャドウトーンを +2 にして黒を引き締めています。
解放時は、それなりの周辺減光があります。
オールドレンズ風を求めているので まったく問題ないですが、トリミングなどをすると一部だけが暗くなったりと違和感が出てしまうので注意。
雲の間から、少しだけ日が出ている状態での逆光撮影。
髪の毛もしっかりと描画されており、中心部は高い解像度です。対して周辺は流れ気味。また、周辺はボケ量が減るような描画になります。
換算 38mmらしいパース感。
この距離感(画角)が実にちょうど良い。
拳。
接写を活かすと、より換算 38mm感が出ます。広すぎず、狭すぎず。人物撮影にもちょうど良い画角です。
背景のボケもなだらかで、被写体(拳)が際立ちます。
特製焼きそば。
18cmまで近づくことができるので、料理などもグッと近づいて撮影が行えます。
外装が凝っているビル。
解放で撮影しているにも関わらず、思いのほかシャープな描画。
タイルが並ぶ壁を撮影。
強めの周辺減光と、樽形に歪曲収差があることが分かります。
ただ、今回は昭和感を求めており、あえての味なので問題なし。これまでの作例通り、そこまで気になることはありません。
手前の電球にピントを合わせ、なだらかにボケていく様子を確認。
解放ではボケ過ぎることと、奥の玉ボケを丸くする意味でも、F4に絞って撮影しています。
絞り羽根が 12枚もあるだけあって、形も綺麗。エッジが固めですが、フラットな玉ボケでうるささを感じません。
ローキー気味ですとクラシックネガらしらが伝わりにくいですが、この質感も悪くない。
最後に比較用として、純正の現代レンズで撮影したサンプルを追加。
クラシックネガの色味によってレトロな雰囲気は出ていますが、周辺減光もなく、画面の隅々まで解像しているのが分かります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ほどよい収差と解像度で、「よりレトロでエモい写真が撮りたい!」という当初の要望を充分に叶えてくれていることが分かって頂けたかと思います。
「安くて画質の良いレンズ」という観点で評価すると中途半端になってしまいそうですが、「クラシックネガを活用するためのレンズ」と考えると、まさにベストバイのアイテムです。
カラーは ブラックとシルバーの 2種類が展開していますが、圧倒的にブラックがオススメ。
岩崎は X-T4のシルバーユーザーですが、シルバーの色味が異なるので一体感が出ません。
明らかなサードパーティ感が出てしまう上に、全体的に安っぽく見えてしまうため、カメラ本体がシルバーでもブラックの方を強く推奨します。F値などの文字がグレーなので可読性も悪いのも気になります。