手になじむ扱いやすさと高画質で、圧倒的に使いやすいXF56mmF1.2 R。
クロップしてしまえばXF90mmF2 R LM WRの画角を再現できてしまうため、万能過ぎるXF56mmF1.2を目の前にして、10万円のXF90mmF2を購入するには、なかなか躊躇するものがありました。
XF90mmF2の特徴は、なによりも素直な絵作り。
色収差が効果的に抑制されたキレの良さと、非球面レンズ未使用による なだらかなボケ味。この辺りに注目すると、XF56mmF1.2との違いが見えてきます。
どちらも新しいレンズではないので、世の中には充分な作例が出ています。本記事では、実際にクロップするとどれくらいの差が出るのかを中心に、画質の差に迫ります。
圧倒的 解像度の XF90mmF2
換算 137mmとなる XF90mmF2 R LM WR。
岩崎も「クロップで良いじゃん」と考えている時期がありました。
しかし、単焦点好きだからこそ、過度に求めてしまう高画質。スキルの足りなさを機材で補うかのように、XF90mmF2を購入しました。
MTFチャートからも垣間見えるとおり、画質の良さはXF90mmF2に軍配が上がります。
それぞれの曲線が 1に近く、ヌケの良さや解像度の高さが垣間見えます。また、S方向、M方向の特性が揃っており、素直で自然な描画が期待できます。
この辺りからも、既に両レンズの設計思想が垣間見れます。
マクロ撮影なら高い解像度が求められますし、ポートレート撮影なら適度な甘さが味となります。
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作例の比較
実際にXF56mmF1.2をクロップした作例と、XF90mmF2の作例を比較してみたいと思います。
それぞれ、ボケ量が同じようになるように f値を調整。三脚利用。ISO固定、シャッタースピードはオート。いわゆる絞り優先オートに近い設定で撮影しています。
SAMPLE 1
* XF56mmF1.2 R : ISO320 56mm f/1.8 1/420s @新宿御苑
クロップ済み高画質データ(JPEG) オリジナルデータ(JPEG)
* XF90mmF2 R LM WR : ISO320 90mm f/2.5 1/220s @新宿御苑
クロップ済み高画質データ(JPEG) オリジナルデータ(JPEG)
ひっくり返っていたゴミ箱?を撮影。右上の輪っかにピントを合わせています。
一般的に解像度を高めすぎると(≒球面収差を補正しすぎると)、玉ボケのエッジが立ち 二重ボケにも繋がります。
作例を見ても、背景の木々や ボケが固く、XF56mmF1.2の方が柔らかい印象を受けます。
二重ボケも、右奥の幹に傾向が見受けられますが、全体的に見ると軽微な印象。XF90mmF2は高MTF性能を確保しながらも、豊かなボケを実現できています。
違いを明確にするため、合焦位置を拡大してみました。
注目は、右上の輪っか部分。
XF56mmF1.2は色収差が発生していますが、XF90mmF2はスッキリと抑えられているのが分かります。
どちらも 大口径の EDレンズが採用されていますが、XF56mmF1.2は 2枚、XF90mmF2は 3枚。通常であれば焦点距離が長くなるほど色収差が目立ちますが、XF56mmF1.2を上回る実力です。
色収差が抑えられている結果、解像度も高く、より立体感が感じられます。蜘蛛の糸もXF90mmF2は、とてもクッキリと描画できています。
次に背景部分ですが、XF56mmF1.2は 年輪のような玉ボケです。
両面非球面レンズが利用されコンパクトに収められた反面、タマネギボケが発生しています。
対してXF90mmF2は、非球面レンズが利用されていないこともあり、クリアな玉ボケを実現しています。
絞り羽根は、どちらも 7枚。
円形絞りですが、羽根数の少なさから少しだけ角張ってみえるのは両レンズとも同様です。
もちろん羽根数は光芒などに影響するため、多ければ良いというワケではありませんが。
SAMPLE 2
* XF56mmF1.2 R : ISO320 56mm f/2.0 1/3000s @新宿御苑
クロップ済み高画質データ(JPEG) オリジナルデータ(JPEG)
* XF90mmF2 R LM WR : ISO320 90mm f/2.8 1/1000s @新宿御苑
クロップ済み高画質データ(JPEG) オリジナルデータ(JPEG)
次は望遠らしく、少し距離を置いた人物撮影。
XF56mmF1.2は背景がザワついていますが、XF90mmF2は落ち着いており、より抜けが良く被写体が際だってみえます。
XF56mmF1.2側はクロップしているので、いくらかの解像度の低下は致し方ないですが、それでもXF90mmF2のキレの良さを感じられます。
髪の毛、ストールの柄、イヤホンのケーブル、バッグの持ち手…等など、目立った収差なども発生せず 高い解像度を維持しています。是非、オリジナルサイズをダウンロードして確認してみてください。
まとめ
ありのままを素直に捉えるXF90mmF2と、良い意味でクセのある XF56mmF1.2。
そもそもの画角が異なるため、そのまま比較できるレンズではありません。
しかし、実際に 2つのレンズを使い続けるたびに、用途に合わせた最適化が行われていることを明確に感じられます。
クアッドリニアモーターによる 高速AF駆動。近接 60cm & 撮影倍率 0.3倍で テレマクロにも最適。防塵・防滴・-10℃の環境に耐えれる 耐低温構造。
換算 137mmという画角だからこそ、スポーツや花、動物や昆虫などの撮影も考慮し、高画質ながらも汎用性の高いレンズに仕上がっています。
この辺りの利用がメインであれば、間違いなくXF90mmF2が用途に合っています。
XF56mmF1.2から切り出しても良いのですが、背景のザワつきが目立ってしまい、被写体を邪魔する恐れがあります。
ポートレート撮影がメインであれば、“まずは”XF56mmF1.2がオススメ。
クセのあるXF56mmF1.2を愛用していると、XF90mmF2はクリアな抜けの良さが、逆に物足りなく感じることがあります。
適度な甘さとコントラスト、つつみ込まれるような優しいフレア。レンズの個性が、絶妙なバランスでポートレートに効いてきます。
また、135mmよりは 85mmの方が汎用性がありますし、小ぶりで取り回しの良さなどを踏まえると、まず最初に購入すべきは XF56mmF1.2ではないでしょうか。
どのように撮りたいかで善し悪しが変わるため、どちらの特性も一長一短。
結果として 2本を買いそろえるハメになってしまいますが、撮影用途に合わせて選択することで、レンズの魅力をさらに引き出すことができるのではないでしょうか。
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作例 (レタッチ済)
最後に、それぞれのレンズで撮影したポートレートの作例を紹介させていただきます。
いずれもレタッチ済ですが、記事の内容を踏まえると それぞれの違いが見えてるかと思います。
※ 写真の二次利用はご遠慮ください。
XF56mmF1.2 R
まずは XF56mmF1.2 R。
程よいコントラストと、キラキラとした玉ボケ。背景のザワつきなどが気になる場合もありますが、それらも含めてバランスの良いレンズです。
解放 f/1.2の場合、さすがに色収差が目立ちます。
f/5.6まで絞ることで、桜の花びらなどもシャープに捉えることが可能です。
XF56mmF1.2 Rのフレアは、本当に心地よい。
秋の夕暮れなどには持ってこいのレンズです。
XF90mmF2 R LM WR
お次は XF90mmF2 R LM WR。
換算 135mmの圧倒的な立体感。ザワつきやクセのないクリアな描画性能が魅力です。
XF56mmに慣れていると、ハッとする描画力。
収差の少ないキレの良さと、背景の柔らかさが相まって、より被写体が際立ちます。
換算 137mm相当の圧縮効果で、ヒマワリ畑や菜の花などでも大活躍。
なんと言っても、フラットでクセのない玉ボケが魅力的。
花火の火の粉や、イルミネーションなどを美しく捉えることができます。
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